大阪市東住吉区にある医療法人金子外科では、地域の皆様のホームドクターとして、患者様お一人ひとりに丁寧で継続的なサポートをご提供しております。このブログでは、患者様の健康維持に役立つ情報をお届けしてまいります。
近年、胃がんや胃潰瘍の主要な原因として注目されているピロリ菌。しかし、その正体や影響についてくわしく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では、ピロリ菌が引き起こすさまざまな胃腸の病気について、その症状から検査方法、最新の治療法まで、専門医の立場からわかりやすく解説いたします。
ピロリ菌とは
ヘリコバクター・ピロリ菌(通称ピロリ菌)は、胃の中に長期間生息する特殊な細菌です。らせん状の形状と数本のべん毛を持ち、胃粘膜表面を自在に移動する能力を持っています。1980年代に発見されたこの細菌は、強酸性の胃内でも生存できる驚くべき能力を持っています。ピロリ菌は尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、そのアンモニアで周囲の酸を中和することで、自身を保護しているのです。
ピロリ菌感染の症状
ピロリ菌感染そのものによる明確な症状はほとんどありませんが、感染によって引き起こされる疾患によってはさまざまな症状が現れることがあります。例えば、みぞおちの痛み(特に食後や空腹時)、胃もたれ感、食欲不振、吐き気、体重減少、貧血などが挙げられます。これらの症状は、ピロリ菌感染によって引き起こされる可能性のある胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの疾患に関連しています。
ピロリ菌が引き起こす病気
ピロリ菌は様々な胃腸疾患のリスク因子として知られています。慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍はピロリ菌感染と強い関連があります。さらに深刻なのは、胃がんのリスクを高めることです。また、胃MALTリンパ腫や特発性血小板減少性紫斑病(ITP)といった比較的まれな疾患とも関連があることが分かっています。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査には、胃カメラを使用する方法と使用しない方法があります。ただし、ピロリ菌検査の保険適用には条件があり、胃カメラ検査で慢性胃炎所見が確認された場合に限られます。そのため、症状がある場合はまず胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
胃カメラを使用する検査
・迅速ウレアーゼ試験
・鏡検法
・培養法
など
胃カメラを使用しない検査
・血液検査による抗体検査
・尿素呼気試験
・便検査による抗原法
など
ピロリ菌の治療方法
ピロリ菌の除菌治療は、通常二段階で行われます。この治療法での除菌成功率は70~80%程度です。除菌後は、尿素呼気試験や胃カメラ検査で効果を確認します。除菌に成功すれば、胃がんなどのリスクを大幅に低減できることが分かっています。
1次除菌療法
1次除菌療法として、胃酸抑制薬1種類と抗菌薬2種類を7日間服用します。
2次除菌療法
1次除菌療法で除菌できなかった場合、2次除菌療法として、胃酸抑制薬1種類と異なる抗菌薬2種類を7日間服用します。
ピロリ菌の感染経路と予防法
ピロリ菌の主な感染経路は、幼少期の経口感染と考えられています。不衛生な水や食べ物から感染する可能性が高く、特に発展途上国では感染リスクが高いです。また、家族内感染、特に母親から子供への感染も指摘されています。
予防法としては、衛生的な水と食べ物を摂取すること、子供への食べ物の口移しを避けること、発展途上国では生水を避けることなどが挙げられます。現代の日本では、衛生環境の改善により新規感染リスクは大幅に低下しています。また、除菌後の再感染リスクも極めて低いとされているので、一度除菌に成功すれば、再び感染する心配はほとんどありません。
ピロリ菌検査と除菌後の注意点
ピロリ菌感染は胃がんをはじめとするさまざまな胃腸疾患のリスク因子です。症状がなくても、特に40歳以上の方は一度ピロリ菌検査を受けることをおすすめします。早期発見・早期治療が、健康な胃腸を維持するカギとなります。
ピロリ菌除菌後も注意が必要なポイント
・消炎鎮痛薬などによる胃潰瘍や十二指腸潰瘍のリスクは残ります。
・除菌後も胃がんのリスクはゼロにはなりません。慢性胃炎が胃がんの発生母体となる可能性があるためです。
「ピロリ菌を除菌したから胃がんの心配はない」と考えて検診をやめるのは危険
ピロリ菌感染は胃がんをはじめとするさまざまな胃腸疾患のリスク因子です。症状がなくても、特に40歳以上の方は一度ピロリ菌検査を受けることをおすすめします。早期発見・早期治療が、健康な胃腸を維持するカギとなります。医療法人金子外科では、最新の検査機器を用いたピロリ菌検査と、患者様の状態に合わせた適切な治療をご提供しています。胃の健康に不安がある方、ピロリ菌検査に興味がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。専門医が丁寧にご説明し、最適な対応をご提案いたします。